ITFjr.ランキングを徹底分析!日本のジュニア選手のチャレンジ状況を探る
更新日:2023年4月14日
日本のジュニア選手が世界で大活躍する予兆あり!
※「ITF World Tennis Tour Junior Rankings」ページのデータを元に分析しました。
毎週更新されるランキングデータを活用しました。[RANKING][PLAYER NAME][YEAR OF BIRTH][NATION][EVENT PLAYED][POINTS]といったデータが確認できます。
インデックス
▼ITF ジュニアランキング概要(女子)
ランキング選手の数はどのくらいか?
2022年3月7日時点のITF Jr.ランキングにおいて、女子は113の国から「2,877名」名の選手がランキングされています。(男子は109か国2,429名です)
これは、ITF Jr.ポイントを獲得している選手が2,877名いるということを意味し、挑戦するもポイントが獲得できていない選手は数に含まれていません。世界を狙うジュニア選手たちは、まずはこのランキングの2,900名に入るための挑戦から始まります。
日本人選手はどのくらいいるのか?
国別で選手数の構成比グラフを見ると、アメリカ、フランス、オーストラリア、インド、イギリス、カナダ、チェコ、イタリアとなっています。グラフの「‐」になっている部分は、ウクライナ侵攻の影響でITFから国名が省略されているロシアとベラルーシになります。日本はというと、ちょうどグラフには表示されていないですが、イタリアの75名の次点になっており73名の選手がランキングに存在します。
はたして自分の可能性はどのくらいなのか?
日本人選手のみに絞り込むと、最高位は38位のSayakaIshi選手で、48位SaraSaito選手、88位MaoMushika選手までが100位圏内です。
プロで活躍することが厳しい世界であることは間違いありませんが、こういった全体の数字や自分と同じような環境で挑戦している日本人選手の状況をとらえることで、どのくらいの可能性がありそうか?挑戦するかどうか?という現実的な試行錯誤が始められます。日本人選手の中には身近に知っている選手もいると思うので参考にしましょう。
選手の年齢はどのくらいなのか?
ジュニアの大会は13歳から18歳までの選手が出場することができるので、心身ともに成長過程の中学生と高校生が同じ土俵でしのぎを削ることになります。女子ランキング選手全体の年齢別構成比を見ると、18歳(27.8%)、17歳(28.7%)、16歳(23.3%)と高校生の年代が80%を占めていますが、15歳で既にランキングを持っている選手が全体の20%もいることになります。中学生の段階で既に世界を相手に経験を積むことは、その後の上位進出に重要な要素であると考えられます。ただ、ランキング上位100人に絞り込むと大きく傾向が変わります。17~18歳がおよそ90%を占め年齢による差が顕著に出ていることがうかがえます。このことから、早い段階で経験を積むことが重要でありながらも17~18歳で上位へ食い込めるよう5~6年間の計画を想定しておくのがよさそうです。
挑戦する目安は何歳くらいまでなのか?
ランキング上位から順番に棒グラフで並べてみると、4位に15歳のFruhvirtova選手が食い込んでおり、多くは16~17歳の選手であることが分かります。
ジュニア卒業の18歳は日本では高校卒業の年齢でもあるので、その後の進路選択を考えると余白を持った17歳が期限のひとつと考えられます。ただし、上位へ食い込むには世界を転戦することが必須条件となるため通常の高校生活には支障が出ます。そのことを考えると高校進路を選択する14歳が次のステップへの挑戦を検討するポイントととらえることができます。
もちろんこれは日本の学校生活を基準にした場合の考察であることを前提としています。
▼日本人上位選手の大会出場動向① 出場数サマリ
★分析前の基礎知識)ITFジュニアランキングにおけるおよそのポイント獲得制度
ランキングを上げるためにはITFの大会に出場してポイントを獲得する必要があります。過去1年間でポイントを獲得した大会のうち上位6大会分の合計がランキングに反映されます。各大会にシングルス(S)とダブルス(D)があり、両方に出場してポイントを獲得することが可能です。ただし、シングルスの獲得ポイントが重視され、ダブルスの獲得ポイントは0.25倍してランキングに反映されます。 年間の出場大会数はどのくらいなのか? 身近な日本人選手の上位から7名を選出して、2022年3月7日時点の大会出場データを元に分析を行いました。最小は8大会、最大18大会で平均は12大会となっています。また、そのほとんどでシングルスとダブルスに出場するためトーナメント出場数は24となっています。平均12大会となると月に1回のペースですが、大会期間が1~2週間と考えるとハードスケジュールであることは容易に想像できます。
なお、大会は世界各国での開催となるので毎月のように海外へ遠征となりますが、実際に7名の平均を計算すると6.7ヵ国となりました。参考までに日本人最高位のSayakaIshi選手の出場国リストを出すと、日本・メキシコ⇔アメリカ・コスタリカ・コロンビア・エクアドル・ペルーと、秋から年明けは南米ツアーを回っていたことが分かります。
▼日本人上位選手の大会出場動向② 年齢別、グレード別
年齢による出場傾向の違いはあるか?
日本の上位選手7名の年齢を確認したところ、SayakaIshi(38位17歳)、SaraSaito(48位16歳)、MaoMushika(88位17歳)、HayuKinoshita(107位16歳)、EnaKoike(136位16歳)、MioMushika(220位17歳)、HonokaUmeda(285位、18歳)でした。比較的に出場大会の少ない2名はともに16歳(2022年に高校入学)で8大会です。前スライドにもあった遠征国別に見ても、日本開催を含めて3~4か国と他選手に比べて少なく、特にHayuKinoshita選手は出場8大会中4大会を日本国内としています。これから世界を目指す多くの日本選手にとって参考にしやすいかもしれません。
どのグレードの大会に出場しているのか?
各大会はグレードにより獲得できるポイントが大きく変わってきます。ランキングを上げるにはよりグレードの高い大会へ出場することが大事な要素となります。各選手の大会出場をグレード別に確認すると、38位SayakaIshii選手、88位MioMushika選手、136位EnaKoike選手はJAやJ1といった上位グレードの大会が多くを占めています。一方で先述のHayuKinoshita選手は半数がJ4大会となっています。低グレードの大会でポイントを積み上げて、今後は上位グレードの大会へ挑戦していくことになることがうかがえます。
▼日本人上位選手の大会出場動向③ HayuKinoshita選手
HayuKinoshita選手の詳細分析
ここでHayuKinoshita選手の直近の出場大会の詳細を確認したところ、2021年9月~10月にかけての日本国内4戦(J4大会)すべてでBest4に入りシングルス/ダブルス合わせて5回の優勝を記録しています。獲得ポイントの内訳を見ると12月のIndia(JB1大会)で獲得した140ポイントがランキング上昇に寄与していますが、国内大会で効果的にポイントを獲得し海外の上位グレード大会へ挑戦するというのは、海外遠征が難しい状況にあるジュニア選手のひとつの参考ルートになると考えます。HayuKinoshita選手は当時中学3年生なので、この段階でこのポジションまでいけると高校以降の進路も思い切った決断ができるというのも注目すべき点となります。
▼日本人上位選手の大会出場動向④ ランキング有効ポイントの獲得状況
どの国の大会でポイントを稼いでいるか?
ここまで大会出場数を分析してきましたが、いくら大会に出場しても勝ってポイントを獲得しないとランキングは上がりません。大きなポイントを獲得するには上位グレードの大会で勝つことが条件です。上位グレードの大会に出られるか?どの国で開催されているか?という情報をチェックしながら出場大会を選び海外遠征を続けるのは大変なことです。日本の上位選手の開催国別の獲得ポイント(ランキング有効分のみ)を確認したところ、38位のIshii選手はコロンビア、メキシコ、ペルーのJA、J1が中心です。48位のSaito選手はインドJ3の優勝とグランドスラム(全豪Jr,)で大きなポイントを稼いでいます。88位のMushika選手はボリビアJ2で2週連続の好成績、107位のKinoshita選手は先述の日本4戦に加えインドと全豪Jr.で構成されています。
▼ランキングと獲得ポイント/大会出場数の分布
どのくらいポイントを獲得すれば100位圏内に?
ランキングは獲得ポイントによって決まるため、各ランキング層のポイント数を分析すればどのくらいポイントを獲得すればよいかが分かります。2022年3月7日のランキングでは下表にあるように100位では541.25ポイントが必要です。200位では278ポイント、300位で180.25ポイントとなります。各層(400位まで)の分布を散布図で見ると、1~100位はポイントが大きく分散していることが分かります。また、下位層へ行くほど分散が密になっています。
200位から100位に上がるためにおよそ270ポイントが必要となり、これはJ4大会(優勝ポイント60)に5回出場し優勝4回と準優勝1回相当です。しかし、上位6大会までのポイントが有効なので、J4グレードに出ている限りは100位は無理です。逆に200位台であれば、国内J4大会でも可能性があるということになります。
このパターンでうまくランキングを上げたのが先述のKinoshita選手ということになります。
※参考チャート 日本人4選手の大会別結果と獲得有効ポイント
▼まとめ
TFジュニア女子ランキングデータから見る日本人選手の参考ルート
★分析対象データ:2022年3月7日時点のITF Jr.ランキング(GIRLS) https://www.itftennis.com/en/rankings/world-tennis-tour-junior-rankings/
世界を目指す女子ジュニア選手は113ヵ国2,877名
そのうち、日本人選手は73名
日本人最高位は38位SayakaIshii選手、100位内に3名がランクイン
ランキングのおよそ80%は高校生(16歳~18歳)、中学生(~15歳)が20%を占める
日本の学校制度を考慮すると、高校大学それぞれの受験を視野に入れる14歳・17歳時点のランキングがひとつの岐路となる
日本人上位選手の出場大会数は平均で年間12大会(8~18大会)となっており、毎月のように海外遠征をおこなっている
ランキングを上げるには、JA、J1などグレードの高い大会へのチャレンジが必須
中学生年代においては、Kinoshita選手のように国内のJ4大会で好成績を狙うパターンも参考になる
ランキングは上位へ行くほど層が厚くなり、グレードの高い大会で大きなポイントを獲得しないとランキングが停滞する
日本人選手が世界へ挑戦するにはまだまだ情報が少ないですが、今回のように公開されているランキングデータを分析するだけでも多くの参考情報を得ることができることが分かります。継続的にデータ更新を続け更に多くの視点で分析することで、より参考になる情報が得られる可能性があるので定期的に分析できたらいいな・・・。
以上
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